2024年8月14日(水)

読んだ本の話

京都 東寺

1)旅先の駅前から。

ひとり旅で街角に立ってこれといった行き先もない時、まずは神社仏閣に向かってみること、よくあります。

何百年もの間、老若男女・身分・職業など様々な人が、様々な願い事や悩み事を持って、ここ神社仏閣に訪ねてきたことでしょう。
たとえば3百年前、お百姓さんやお侍さんの恰好をした私と同世代のおじさんが、ここに立って何をお願いしていたのかなんて想像してると、なんとも愛しい気持ちになるのです。

時代によって、頼みごとの違いはあっても人間の願い事に大差ないんだよなと思いつつ、今の時代のひとりとして手を合わせます。

京都 東寺1

2)おススメ、京都の東寺。

数多く記憶に残る神社仏閣の中で、ポピュラーなイチ推しとして、まずは京都の東寺をあげてみます。
京都駅の京都タワー側でない側に、五重塔が見えます。あの五重塔のあるお寺が東寺です。空海のお寺さんです。

京都駅から歩いて15分くらいです。五重塔を目指して歩けば、道に迷うことはないでしょう。

京都 東寺2

3)和尚さん。

私たちがお坊さんを見上げるとき、毅然や威厳という姿とやさしくそばで寄り添っていただきたい親しみやすさと、この相反するとも思われる両面を 望んでいる気がします。

空海は、仏教界の最高峰の権威の師として弘法大師という威厳ある側面と、民衆が困ったときお話を聞いてくれるやさしい和尚さんとしての空海さんという両面を持っておりました。

そして、お坊さんが教えを授かるために厳しい修行する場としてあるのがあの高野山であり、庶民がやさしい和尚さんにお会いに行くところがここ東寺という感じになります。(私見ですが)

京都 東寺3
(高野山)

4)3Dに具現化するという至難。

京都 東寺4「曼荼羅」Wikiより

このお寺には、なんといっても圧巻の立体曼荼羅があります。

仏さまによる地球防衛軍、各部門配置図ともいえるのが「曼荼羅」という一枚の絵です。
この仏様一覧の一枚の絵図から、まずは実物大の仏像を作成し、そしてそれらを大きな講堂内にバランスよく配置して、3Dとして表現しようとしたものが立体曼荼羅です。

空海というひとりの情熱を、一度はあの空気感の中で見ておいたほうがいいでしょう。クオリティーと数と大きさと広さと熟成度と、何もかもが息をのむほどの空間です。

5)歯科の立体曼荼羅

京都 東寺5

歯科医は1本の歯牙を、彫刻刀一本で彫り上げることができなくてはなりません。(今は技工士さんと完全分業制になっていささかあやしくなってきましたが)。
入学して初めてやってみた時、正面ばかりの形態を追って削っていくと削り過ぎてしまい、斜め上から見た時との辻褄があわなくなってきてしまうのでした。彫刻の難しさです。

京都 東寺6

そして入れ歯では、この人工歯の14本を、ずらずらっと半円形に並べます。「上下」「前後」「左右」の空間で並べていくわけですから、ほんとに難しいのです。
正面から見たテイサイばかりにとらわれていると、斜め前から見た時に歯が飛び出て見えていたり逆に引っ込んで暗く見えてしまったり、左右不均等だったり、機能的でなかったり、生身の人間ですから元々が非対称だしなぁ~とか、悪戦苦闘を体験します。

立体を実際にやってみると、ごまかしがきかないのと、どの角度から見てもバランスが取れてないといけないので、とにかく大変です。
仏さまと入れ歯を同列に考えるのも不謹慎なのか酔狂なのかわかりませんが、私なりに小さな歯が並んでいる入れ歯とは、いつも口腔内の立体曼荼羅と思っております。

京都 東寺7

京都 東寺8

後編につづく

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