2024年5月20日(月)

趣味のコラム

視覚からの魔の手

1) 【デジタルミラー】

視覚からの魔の手01

夜、前を走っている宅配便の車のルームミラーが、鏡じゃなくてモニターだった。
 「かっこいいじゃんか!」
朝の荷物をいっぱいに詰め込んでいる時は、ルームミラーがまるで役に立たないのは想像つく。

私だって、後ろに3人を乗せて運転しているときルームミラーをうっかり見てしまって、後ろの人と目があって挨拶することもあるし。
荷物を運ぶ車にとってのデジタルミラーは、必需品だろう。

視覚からの魔の手02

 一方、車の外についているドアミラーの方は、それほどまで普及していない。ルームミラーは構造的に不可欠だが、ドアミラーでの選択となるとコストの問題もあるが、それよりもどうやらあまり使い勝手がよくないようだ。

実際にドアミラーをデジタル化すると、
鏡の光は、直感として直視で見たものと同じ扱いでいいのに対し、
映像は、当たり前ではあるが脳は2次元の絵として反応するからである。

視覚からの魔の手03

 運転中に一番必要な情報は、遠近感・距離感と立体感である。
デジタルバックミラーにすると、まずは前の先の方を見ていた焦点をハンドル横にある画面に合わせ直して、次に2次元の絵を元にして状況を判断しなければならないのである。

カクカクとした動きからこっちにやってくるスピードの推測もしなければならないのは技術的な進歩で期待できるとしても、脳の処理の問題となると“なれ”という個人の技量に頼ることとなる。
進捗度(しんちょくど)は、いまひとつのようである。

視覚からの魔の手04

2) 【一眼レフカメラ】

レンズを付け替える一眼カメラには「デジタル一眼レフ」「ミラーレス一眼」とがある。
どちらもデジタルカメラなのだが、“プリズム式”と“ノンプリズム式”を分けるために、こう言葉の使い分けをしている。

視覚からの魔の手06

 デジタル一眼は、プリズムを使って撮影対象からの光を、撮影者の目とカメラの撮影部に分け操作する。シャッター押すときは、肉眼で見たそのままの描写となる。

 ミラーレスカメラは、最初からすべてを映像として処理する。それをファインダー内のモニターと撮影部に分けているのである。
ファインダー内がすでに二次元の映像であり、シャッターを押すとはただそれを記録していることとなる。

視覚からの魔の手07

 目に映っている情報が、光か映像かの違いは、先のバックミラーの話に通じるところがある。
しかしこちらのほうは、このプリズム本体がかさばるので、小型化のできるモニター式が主流である。ニコンなどはプリズム式の開発研究はやめてしまった。

視覚からの魔の手08

 そもそも写真とは目で見た3次元を2次元に表記する機械なので、屁理屈にしかならないが、せめて肉眼で見た3次元の光を撮影したいと思って、私は重いデジタル一眼レフを持ち歩いている。

 今の若者はカメラとの出会いが携帯の撮影で始まっているので、画面からの撮影に抵抗がないのだろう。
 ミラーレス式は、“常時モニターを流しっぱなしにしていて、それを見ながらたまにスイッチオン”と口の悪いことを言いながら、時代の波に押し流されそうです。

視覚からの魔の手09

後編につづく

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