時代は一つ前の、昭和から平成に変わるころだったと思いますが、アラスカに魅せられた写真家・星野道夫のエッセイの中で、「あと50年早くアラスカに来たかった。そこには200年前の同じ世界があったと思うから」みたいな話を読んだことがあります。
アラスカに限ったことではありませんが、この200年で石炭・石油文明が発明されて、生活形態ががらりと変わりました。
そして歯の話ですが、
星野道夫のたとえで言うと、10万年前の人と1000年前の人はおそらく同じようなものを食べていたが、100年前の人と今の人は、まるで違うものを食べているということが、今回の本題です。
ホモサピエンスがアフリカを出発して10万年、そして今の食生活は、ほんの50年ほどのこと。
「10万年と100年」と言われてもピンとこないので、単位を円に換えて、10万円のうちの100円とか50円と考えると、すっかり変わってしまったのは、ごくごく最近ということがよくわかります。
だから、生体の進化という話でいうと、歯は、今の食生活にまったく対処していません。
だから人間は歯のことで悩むのです。
キリンの首が伸びたとか鳥が空を飛べるようになったとか、環境に合わせた生態系の進化は、50年や100年の単位では無理でしょう。(突拍子もないたとえで、かえって混乱)
人類は、歴史上そのほとんど何万もの間、いつも空腹を感じていたというのが基本でしょう。
現代のいつでも手を伸ばせば食料があるということは、ある意味異常なことです。
さらには、ラーメン・ハンバーグ・オムレツが一週間のうちに何度も出てくる食生活なんていうのも、体は対処していません。
食料がやわらかくて口当たりがよくておいしいものばかりなんて、もう体は喜んでいいのか悲しんでいいのか、今は思考停止状態です。
歯も体も、もうなるようになれと…
そんな中、
我々も苦労をしつつ、この50年ほどの間の中で、歯のメインテナンスを、生物学上・自然界上からかんがみて、“不自然なほど(笑)”手をかけてあげれば、なんとかなるということがわかってきました。
言い方を変えると、不自然なほどの手入れをしなければ、歯は持たないということでもあります。
「歯をちゃんと磨きましょう」とは、そういうことだったのです。
(みんな、わかりましたか?)
補足ですが、
昔の人は、ほとんどの人の寿命は短かったので、歯が悪いのもそれほど目立ちませんでした。
いい加減なことを言うと、現代の食生活でも40歳ぐらいまでなら、歯なんか磨かなくても何とかなるような気がします。
しかし現代の寿命の70年80年を考えると、歯は壊れていないうちからしっかりメインテナンスをしないと持ちません。