2023年8月7日(月)

お口の中を楽しくコラム

歯肉炎と歯周病の違い

温泉旅行でマッサージさんを頼むと、「お客さん、だいぶこっていますね」と言われます。これは「日頃、お忙しくなさってますね」という日本文化のお世辞の意味合いも含まれます。
(余談ですがテレビ番組で、外国で「お疲れですね」と声をかけると、みんな全力で否定に入っていました。文化の違いです。)

しかしマッサージの話ですが、いささかひねくれた見方をすると、“こってないとこがない人はいない”と言うことも、できます。
「日本人の8割は歯周病」という医薬品メーカがあおってくる文言があるのですが、“実はこれと近いものなんだよな”というのが今回の本題です。

歯肉炎と歯周病の違い1

1) まずは、歯肉炎と歯周病の違い

歯肉炎は、名前の通り歯肉の炎症で、「・・・という症状がみられます」という意味で使われます。
原因があって炎症を発症し、原因がなくなれば治ります。
炎症の原因には細菌の侵入や組織の損傷などがあげられ、歯肉炎の原因は言うまでもなく、磨き残しの細菌です。

歯肉炎と歯周病の違い2

歯周病の方は、歯肉炎を何十年も放っておいて、歯肉や植わっている骨の部分にダメージを受けてしまった“病名”です。
歯を支えている歯肉や骨が弱ってくると、歯はグラグラとしてきます。固いものが噛みしめられなくなってきます。そうすると、歯周病という病名がつきます。

たとえで言うと、「咳」や「鼻漏(鼻水)」や「咽頭痛」が症状名で、「風邪(急性上気道炎)」が病名です。
今の症状を和らげる処置と病(やまい)の根本に対する治療と、明瞭な境界はないのですが、いささかニュアンスが違ってきます。

歯肉炎と歯周病の違い3

2) まずは歯肉炎をもう少し詳しく。

歯肉炎は、その患者さんに「ある・なし」というという話よりも、その患者さんのどこのあたりがそうかそうでないかということとなります。
先のマッサージを例であげたのは、「磨き残しのない人はいないといってもいいくらいです」というところが似ているからです。

歯肉炎の原因となる細菌は何と言っても、プラーク(歯垢)です。
「いつも」「そこだけ」が磨き残しのままですと、そこのばい菌をやっつけなければと、血液は集まってきます。
この歯肉がうっ血している状態の「場所」を歯肉炎といいます。

「この辺りの歯肉が腫れています」「右上あたり歯ブラシの時出血します」「ここんとこ歯肉炎ですよ」「このままだと歯周病になってしまいます」などなど、みな同じことを言っているのでした。

歯肉炎と歯周病の違い4

私もぽやんとテレビを見ながら歯を磨いていると「あれ、出血だ!」という時、あります。
そんな時は、どうやったら一番出血するかなと歯ブラシの角度を右往左往してみます。「一番出血する角度」=「そういう角度が足りなかったのか」と学習して、次回から気を付けて磨くようにしています。

磨き残しの部分をよく注意して、歯ブラシでプラークをきれいに取り続ければ、歯肉炎は普通は一週間もあれば良化が見られるでしょう。

歯肉炎と歯周病の違い5

後編につづく

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