「最近おれ、あご痛てぇ~んだ。病院 行ってこよっかなー。」
最近のテレビは健康番組が、横行闊歩しています。(悪い意味で)。
- 「めまいがあるのはそれは隠された重病の前兆で、そのまま放置していると、死に直結する前触れかもしれません。」
- 「最近、足がつったりしませんか。それは死に直結する病の前兆かもしれません。」
ひとつの症例を、針小棒大にドラマ仕立てに仕上げる。不安をあおれるだけ、あおる。
いらっしゃいませ顔した医者が、後ろでうなずく。
あーゆーのは、見ないが一番。
不安にあおられない強い心を持つのではなく、近寄らないようにしています。私の場合…
そーいえば、その中の一つに、歯ソーノーロー菌が肺に侵入すると、もうすぐにも死んじゃいますよってのもありましたね。(笑)
“起こらない可能性は、0ではありません”ってのと“起きる可能性は、ほとんど0に近いです”ってのでは、同じことなのですが、どちら寄りで番組を作るかで、印象はガラリと違います。
テレビ局の人たちは視聴率で作っているので、その後の視聴者のことなど考えちゃいません。
そんな中の歯科関係の番組で、もう一つ、「かみあわせがずれていると、だんだんと背骨が曲がって行き、やがては、歩けなくなってしまいます」と、いうのもありました。
原因の説明も一応はしてはいるんですが、ほとんどは「歩けなくなっちゃう!」と言うところのみが、例の効果音つきのショッキング映像で強調させられていました。
見ている人は、そこばかりが頭に残ったことでしょう。
この寝たきり発言も、確率としてはゼロではありませんから、正しいのかもしれませんが、それでもこの原因だけでは、なかなかね~…というのがフェアーな感想でしょう。
こういう健康番組は、冷静に、正しい知識を増やし、特別に、神経質になる事なく… かといって、放って置くでもなく… あたりの態度で見るのが、正しい見方でしょう。
そこで(ここからが本題)、ちょっと難しいかもしれませんが、かみ合わせの話をちゃんとお話しましょう。
まずは、「骸骨の頭の部分」って思い出せますか?
いや~よく、冷静に見てみると、
こんなかんじでして、さらに頭の骨を分解してみると、
頭本体と、下顎骨の二つからなっています。
当然この二つの骨は、肘や膝と同じく腱や筋肉でくっついていて、そして動いています。
左右いろいろな筋肉が微妙に、伸びたり縮んだりする事が組み合わされて、モグモグ運動が繰り返されています。
この上の骨と下の骨の接点は「3箇所」です。
「耳の下あたりにある左と右の関節」と、「歯(かみ合わせ)」です。
そして顎関節症とは、
「上下の歯が一番噛みあうところ」と、
「二つの顎の関節が一番楽なところ」が
ずれているという事なんですが、イメージわきますか。
話はすっ飛んで、これらをイメージしてもらうために、
こんどは、「ドア」。
これも本体とトビラは、3箇所で固定されます。
「2ヶ所の蝶つがい」と、
「ノブのカチッと閉まるところ」。
ちょっとイメージわきやすくするために、ちょっと向きを変えて、こんな感じに。
ドアは、2つの蝶つがいでぱかぱか開いて、ドアノブのところでカチッと噛みます。
これを顎に当てはめて考えてみてみると、
「二つの蝶つがい⇒左右の顎関節」
ドアノブのカギがかかるところ
⇒歯のかみ合わせ
です。
蝶つがいは動きを誘導・制限する役目、ノブは仕事をするところ、というかんじです。
ドアは閉まらなければ意味ありませんから、必ず毎回ノブがカチッと言うまで、何とかします。
カギをかけることが目的ですから、もし建付けの悪いドアがあるとしたら、誤差の負担は、蝶つがいのほうにかかってきます。
またまた話し戻って顎のほう。
歯の噛み合わせも、ドアの突起部がカチャッというように、上の歯と下の歯がガチッとかみ合うところがあります。“ドアは閉まるまで何とかする”を歯に置き換えると、“ご飯を噛みきれるところまで顎は動かします”と、なります。
そして、顎関節の居心地のいい所と、がちっとかみ合うところが、ずれていたとしたら、どうでしょう?
蝶つがいに一番ストレスなく動く向きとか場所があるように、右と左の顎関節にも、一番しっくりと来る場所というのがあります。
顎運動も、動きを制限する両関節と仕事をする歯からなっていて、両者に不釣り合いがあったとしたならば、ご飯をかむ事が優先されます。
ご飯をかむことが優先されるということは、顎関節にストレスがかかってきます。
「一番噛みやすいところ=噛みきれるところ」と「関節が一番楽なところ」が、ずれているとしたら、顎関節痛として症状が出てきそうですね。
日常の中で「そういえば最近ちょっと顎が…」って感じから始まって、症状としては、顎が痛いとか、口が開かないとか、いやに頭が痛いとか、しきりに肩がこる、とか感じてくることがあります。
こんな一連の症状が顎関節症です。
関節痛とは、膝が痛いとか肘が痛いと同じようなものです。
そしてそれをかばうために、無意識下で変な筋肉の緊張が続くと、それに伴って肩こりとか頭痛とかの症状も出てきてしまうことがあります。
そんなあたりの、体の不都合のことです。
で、どうしましょ?
この建付け悪いドアを直すには、ノブの方は穴掘っちゃって動かせないんで、一度、蝶つがいをはずして正しい位置に付け直せば、任務完了です。
一方、顎の方は、顎関節のほうをいじるには、外科的手術が必要となってしまうので、ちょっとリスクやストレスが大きいので、顎関節症は先に、かみ合わせの方を検討してみます。
まずはマウスピースを入れてみましょう
これを一日中入れていると
噛んだ歯の感覚って言うのを、脳が忘れてくれる。
実はぐっと噛むことは人間の快楽の一つです。なんなんでしょうね。よくわかりませんが、それでもたまに柿の種なんかお煎餅をポリポリ食べてると、食欲を満たすというだけではない、何かもうひとつちがった喜びがあるような気がします。
だから発言力の強いかみ合わせを、ちょっと強制的に封印していると、控えめな顎関節が、「あの~、実はこの辺で噛んでくれたら、私もほんとは楽なんですけどね~」と言ってくるんです。
噛んだ感覚を忘れたころを見計らって、そーっと顎を閉じてみると、
この術前・術後の違いが、わかりますかね。
ほんの少し前噛みになっています。
かみ合わせとは、例えば右側の奥歯に髪の毛一本挟まってしまうと、もう左側は噛みきれないなというところなので、口の中の1mmのずれは大騒ぎなずれです。
ぎゅっと噛むという行為をしばらく封印してみると、顎関節が一番楽な場所を提示してくる。
そこが、
蝶つがい(顎関節)が一番楽なところなんです。
そしてその位置で、歯を、
正しいかみ合わせに治せばいいだけです。
が……
かみ合わせを治すとは、矯正の先生の所に行くとか、すべての歯にわたって足したり削ったりの治療をして、すべて再構築しなければなりません。
「それも大騒ぎですね~」と、ここまで来て、身も蓋もない展開に…
そして最初の、医学番組の話に戻るのですが、
医療の本質は
- それによってなにかつらい症状が出ているのかどうか
- そのまま放っておくと悪化してしまうのかどうか
この二点です。
ものすごく痛いわけでもなく、噛むことにものすごく不自由しているわけでもなく、明らかな症状の進行もしていないようでしたら、ちょっと様子を見ましょうかという場合もあるかと思います。
体もある程度の誤差は認めてくれるはずです。
まずはマウスピースを入れて顎関節を休ませてみる。
うまくいけば炎症が取れて、痛みが取れる。
そこで、まずは原因をよく理解する。
そして、落ち着いて再び自分の様子を見てみる。
そのうえで治療の方法を模索して、治療をする場合と経過観察した場合のリスクやメリットの、両者を考えてみる。
そこからの、ファイナルアンサーでも遅くはないと思います。これはすべての医療に共通するステップだと思います。
そしてこの顎関節症も、治療をした方がいいとなれば、また次のステップを模索することになるのです。
