歯ブラシの目的は、白いネトネト(歯垢・プラーク)を、落とすことにあります。
あの“ネトネト”は、ガスレンジの油汚れみたいに、強固にこびりついた汚れではありません。そっと触れるだけで、十分に取れます。
その一方、今度、そっと触れただけでは、毛先が歯の溝や境目の間までは届きません。よって毛先が別れて歯の溝や境目の奥まで届くまでの力でそっとこするが、正しい磨き方です。
歯ブラシの基本形は、昔は縦磨きとかローリング法とかいろいろなことを言っていたのですが、最近は
「鉛筆持ちで、歯を一本づつ、横磨き」
ということになっています。
歯を磨く目的は、“歯垢を隅々まできれいにふき取ること”です。
鉛筆持ちは、細かい動きをするためというのと、力をコントロールするという、ふたつの意味合いがあります。
歯磨きは皆さんにそれぞれ、“歯並び”と“磨きぐせ”があるので、実際の磨きかたについては、ゆっくりと衛生士さんに聞きに来てください。
歯垢を赤く染めだして、実際にやってみましょう。
力を入れなくても汚れが落ちるということと、隅々まで落とそうと思うとかなり時間がかかることに、ちょっとびっくりします。
白地の歯に、白いばい菌はカモフラージュ。
丸い歯を平らな歯ブラシでこするので、歯と歯の間と、歯と歯肉の境目が、磨き残しとなります。
さらに少し歯並びが悪いところは、凹んだところになって、そこが磨き残しとなります。
見えるところを全部きれいにしてさあ終わったといっても、まだ裏側もあります。
歯並びの悪いところの裏側となると、さらに難易度が上がります。
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それともう一つ、
とにかく、汚れを落とせばいい…ってんで、「歯磨き」という言葉から、
歯をピカピカに磨き上げるんだというイメージで歯磨きすると、だんだんと、歯が削れてきてしまいます。
金属ですら穴が開いてしまっています。
噛む面の穴ならいざ知らず、側面の穴は、歯ブラシが原因でしょう。
毎日毎日、30年も40年もこすり続けると、こうなります。
自分の歯をこすり続けると、歯ブラシの通った通りに、まっ平になっています。
露出した歯根の真中あたりがちょっと茶色いのは、もうすぐ神経が出てきますよってことです。
このあたりまでになると、冷たいアイスクリームで、「ヒィェ~」ってなります。
「じゃああまり歯は磨かないほうがいいのですか」という質問をよくされるのですが、間違った方法だからこうなってしまっているので、
「正しい方法で、年がら年中、磨いてください」と答えています。
三つ子の魂で、歯ブラシは物心つく前からやっているんで、脳みそを奥深く、本能に近いところに書き込まれています(おそらく)。
酔っぱらって意識無く家に帰って、朝起きてみてテーブルの上に歯ブラシが置いてあって、「ああ、おれは昨晩歯を磨いて寝たんだな」という経験がありました、が。
だから今までグーで握って歯を磨いていた人が、今日から鉛筆持ちでというのは意外と大変なんです(これほんとう)。
ここに来るたびに同じ話にうなずかて「ああ、そうでしたね」と聞いていただいてるうちはまだだめで、実は「そのお話、前回もされてましたよ」というお顔をされるとちょっと安心なんでです。
