2018年8月6日(月)

お口の中を楽しくコラム

歯が抜けるメカニズム

なぜ、歯周病で歯が抜けてしまうのですか。

少し強引なたとえ話です。

海に潜る前、海水が入ってこないようにウエットスーツを着るとします。
弱点があるとしたら、首回りでしょう。
これをイメージして、歯の話をします。

人間の骨は、全身すきなく完璧に皮膚で覆われています。
そして唯一、骨が皮膚を突き破って外界にさらされているところが、です。
ちなみにむき出ている骨である歯は、堅固にコーティングされています。
(この堅固にコーティングしているエナメル質の功罪は、’虫歯のポーカーフェイス’の項にて)

そして、
を攻撃するバイ菌も、入っていくとしたならば、歯と歯肉の境目しかありません。



入り口にたむろっている、ばい菌たち。

曲面の歯を平らな歯ブラシで磨くので、構造上どうしてもこのような清掃状態になりがちです。
磨き残しをそのままにしておくと、このあたりの歯肉は炎症を起こし、やがて腫れてきます。
歯肉が「腫れる」ということは、言うなればウエットスーツの首周りが伸びてしまった状態です。
細菌はここから侵入します。

いかにも歯に沿って、「バイキンが入っていきます!」って感じがします。

それでは、なぜ細菌が入ってくると、歯が抜けてしまうのですか?

まず細菌をやっつけるために、血液をそこに集中させます。
これが、歯肉が“腫れている”という状態です。
骨も、血液の通りをよくしようと協力するので、長引くと骨は“カスカス”になってしまいます。

それともう一つ、
体は細菌まみれの歯を細菌のカタマリと認識して、
免疫反応で、異物の除去を開始します。

結局、あごの骨はばい菌まみれの歯をみると、
過剰反応をして
あたり一面を戦場・荒野化
してしまうのです。

レントゲンを見てみましょう。

この模型とこの模型から、このレントゲンをイメージわきますか。


歯周病のない状態


下の奥歯はほぼ埋まっていない状態。その手前の何本かはもう抜けてしまっています。

口の中を見た状態では一見何でもなさそうでも、レントゲンで比べてみると明らかな違いがあります。

先ほどの患者さんの話ですが、一生懸命歯ブラシをしたら、ウエットスーツの首回りが、きつきつの状態になりました。

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